強制わいせつについて

強制わいせつとは何か

強制わいせつとは、①13歳以上の男女に対し、相手方の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行または脅迫を用いて、相手の身体に直接触れ、または衣服の上から触れること及び②13歳未満の男女に対し、相手の身体に直接触れ、または衣服の上から触れることをいいます。

痴漢触れるというのは、手で触れることに限定されるものではなく、自らの身体を他人に接触させることも含みます。

刑法第176条は、
「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつ行為をした者も同様とする。」と規定しています。

なお、類似する犯罪として、痴漢の罪(福岡県であれば、福岡県迷惑防止条例第6条1項1号)があります。

痴漢の罪については、こちらのページをご覧下さい。

 

注意一般的には、他人の下着の中に手を入れる行為や無理やりキスをする行為は強制わいせつ罪、他人の臀部を着衣の上から触る行為や他人に密着してあえて身体を接触させる行為は迷惑防止条例といった形で区別されていますが、事案の内容ごとに個別具体的に判断されるため、明確に区別することはできません。

 

強制わいせつの「暴行・脅迫」とは

犯罪強制わいせつ罪の「暴行・脅迫」とは、暴行罪(刑法208条)の「暴行」、脅迫罪(刑法222条)の「脅迫」より強度の、相手の反抗を著しく困難にする程度のものが必要といわれています。

例えば、相手の手足を押さえつけるような行為が典型と考えられます。

 

車内での痴漢行為はどうか 車内での痴漢行為はどうか

電車やバスなどの痴漢行為の場合、通常、相手の手足を押さえつけたりしないため、「暴行を用いて」とはいえないように思われます。

しかし、このような車内での痴漢行為について、裁判例は、強制わいせつ罪を認める傾向にあります(名古屋地判平成29年9月5日など)。

判例は、暴行を手段とする場合に限らず、暴行自体がわいせつ行為である場合を含めていると考えられます。

 

すれ違いざまに女性の胸に触れる行為はどうか すれ違いざまに女性の胸に触れる行為はどうか

上記のとおり、判例は、相手の同意を得ずわいせつな行為している場合、広く、強制わいせつ罪の成立を認める傾向にあります。

そのため、すれ違いざまに女性の胸に触れるようなケースでも、女性の胸に触れる行為自体が暴行であると評価できる場合、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。

 

裸にして写真を撮る行為はどうか 裸にして写真を撮る行為はどうか

強制わいせつ罪は、必ずしも被害者の身体に触れる必要はありません。

したがって、裸にして写真を撮る行為であっても、わいせつ目的であれば、強制わいせつ罪が成立し得ると考えられます。

判例 強制わいせつ罪が成立するとした裁判例

婦女の全裸写真を強制的に撮影しようとした行為について、被告人が男性として性的に刺激興奮させる性的意味をも有する行為であることを認識して行為に出たときは強制わいせつ罪が成立する。

【東京地裁昭62.9.16】

 

強制わいせつの「わいせつ」とは

犯罪刑法上(公然わいせつ罪等)の「わいせつ」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的同義観念に反すること」とされています(最判昭26.5.10)。

 

無理やりキスをする行為は強制わいせつか 無理やりキスをする行為は強制わいせつか

上記のわいせつの定義からすると、キスをする行為は「わいせつ」には該当しないとも思えます。

例えば、映画のキスシーンを見て、「善良な性的同義観念に反する」とは考えられないからです。

しかし、強制わいせつ罪は、公然わいせつ罪とは異なり、個人の性的人格を直接侵害する罪です。

そのため、公然わいせつ罪の「わいせつ」概念より、広く解釈されています。

裁判例においても、無理やりキスした事案において、以下のように判示しています。

判例 無理やりキスした事案においての裁判例

「単に自己の性欲的満足を得る目的で相手方の感情を無視し、暴力を以て強いて接吻を求めたものであり、かような情況の下になされる接吻が一般の道徳風俗感情の許容しないことは当然であって刑法の猥褻の行為に該るものといわなければならない」

【東京高裁昭32.1.22】

 

セクハラは、その全てが強制わいせつか セクハラは、その全てが強制わいせつか

痴漢よくある相談が、上司が、部下に対してセクハラをして、警察沙汰になってしまったというものです。

部下である被害者の方が、会社に申告することができず、警察に相談することが多々あります。

警察は、被害者保護のため、強制わいせつの疑いで捜査を開始します。

しかしながら、セクハラの中には、「暴行・脅迫を欠いている」ものがあります。その場合、強制わいせつ罪は成立せず、最終的には不起訴処分となります。

すなわち、「セクハラ=強制わいせつ罪」ではありませんので、注意が必要です。

暴行・脅迫を用いないセクハラ行為を行ったケースであれば、依頼を受けた刑事弁護士は、示談交渉を行いつつ、無罪を主張していきます。

また、このようなケースでは、取調べ対応もとても重要になりますので、取調べ前に入念に打ち合わせを行います。

 

わいせつ目的が必要か?

盗撮強制わいせつ罪は、自らの性欲を刺激、興奮せしめ、または満足させる性的意図がなければ処罰し得ないと解されています。

 

報復目的で裸にして写真撮影した場合はどうか 報復目的で裸にして写真撮影した場合はどうか

わいせつ目的ではなく、報復するために裸にして写真撮影したような場合、わいせつ目的ではないため強制わいせつ罪は成立しないと考えられます。

裁判例においても、以下のように判示したものがあります。

判例

「強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し、婦女を脅迫し裸にして、その立っているところを撮影する行為であっても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しない」

【最判昭45.1.29】

 

 

13歳未満の男女に対するわいせつ行為

子供刑法第176条は、13歳未満の男女に対するわいせつ行為については、「暴行又は脅迫を用いて」という要件を設けていません。

そのため、被害者が13歳未満の場合、相手が同意していていたとしても、わいせつ行為を行えば、強制わいせつ罪が成立します。

13歳未満であることを知らなかった場合 13歳未満であることを知らなかった場合

相手が13歳未満の場合に、相手の同意を得てわいせつ行為を行う場合、13歳未満であることの認識がなければ、故意が欠けるため、強制わいせつ罪は成立しません。

ただし、刑事裁判において、13歳未満であることを知らなかったという認定は簡単にはされないと考えられます。

 

 

強制わいせつと、強姦(強制性交等)との違い

強制わいせつ罪と似た犯罪として、上述した痴漢の罪の他に、強姦罪(法改正により、正式名称は強制性交等罪。以下同じ。)があります。

違いは、「性交、肛門性交又は口腔性交(以下『性交等』)」を目的としたかどうかです。

性交等を目的としていた場合は、強姦罪とされ、性交等を除くわいせつ行為をしようとしたに留まる場合は、強制わいせつで処罰を受けることになります。

強姦罪の弁護方針についてはこちらをご覧ください。

 

 

弁護活動の内容

強制わいせつを認める場合

噂強制わいせつ罪は、重い犯罪であるため処罰の必要性が大きいとされていますが、その反面、被害者のプライバシーの問題等もありますから、被害者の意向を無視して検察官が起訴をすることはありません。

被害者の処罰感情の大きさが、起訴・不起訴や逮捕・不逮捕に影響を与えるのです。

そこで、強制わいせつを認める場合に重要になってくるのが、早期から被害者に謝罪・交渉を重ね、示談を成立させ、被害者の許しを得ることです。

早期の示談であるほど、逮捕される可能性、起訴される可能性を低く抑えることができます。

早期の示談が重要とはいっても、被疑者は身体を捜査機関に拘束されていることが多いですし、仮に逮捕されていなくても、被疑者本人が検察官から被害者の住所等を教えてもらうことはできないため、直接示談交渉に臨むことはできません。

もともと知り合いのケースであっても、多くのケースで、強制わいせつ事件をきっかけに連絡を取り合うことができなくなります。

示談交渉に臨むのは、選任された弁護士です。

早期から弁護士を選任することが重要ですし、迅速・的確に弁護活動を展開してくれる刑事専門弁護士を選任することが重要となります。

 

強制わいせつを争う場合

検察官のイメージイラスト強制わいせつを争う場合、逮捕、勾留されるケースが多くなります。

長期の身体拘束となると、私生活への影響が出てしまいますから、可能な限り早く釈放されるために、弁護士が迅速に活動を開始する必要があります。

可能な限りの早期釈放を現実のものとするために重要なのは、被疑者が強制わいせつ行為をしていないことを示す証拠を、検察官や裁判所に多く提出することです。

なお、事案によっては、「暴行がない」、「故意がない」等と無罪を主張しつつ、セクハラの事実自体は認め、示談交渉を進めることもあります。

示談が成立すれば、強制わいせつの成立を争っていても、示談成立を理由として釈放や不起訴が近づきます。

性犯罪のイメージ画像証拠収集方法としては、友人・親族への聞き込み等を行い、被害者が当時は同意をしていたことを示したり、目撃者を探し当時の状況を聞き出して、他の真犯人がいることを示したり、することが一例として考えられます。

そして、証拠を探し出し、検察官や裁判官に提出するためには、被疑者は身体を捜査機関に拘束されているわけですから、弁護士が迅速に証拠の収集に臨む必要があります。

弁護士の技量と熱意によって、証拠の収集も大きく影響を受けますから、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。

 

 

強制わいせつ事件の弁護活動の流れの一例

事件の発生

被害者事件の発生現場として多いのは、飲食店やカラオケ店、路上、車内などです。そういった場所で例えば酔った勢いなどで強制わいせつ行為が行われ、被害者が、その日もしくは数日後に警察に相談・通報し、事件が発覚します。

警察は、被害者からの聞き取り捜査を行ったうえ、当日の防犯カメラ映像などを捜査し、強制わいせつの疑いが強まれば、被疑者を逮捕して取調べを行います。(在宅事件とされ、警察から任意出頭の要請が入ることもあります)

弁護士への相談

弁護士バッジ強制わいせつ事件を行ってしまった被疑者は、①家族や会社に知られたくない、②会社をクビになりたくない、③前科をつけたくない、④逮捕されたくない、⑤報道を避けたい、様々な理由を持って、弁護士に相談に行きます。

強制わいせつ行為を認めておられる場合、弁護士がお伝えするのは、「早期の示談交渉開始の重要性」です。ご依頼になられた場合、即日で弁護士から警察に連絡をし、被害者の連絡先が分かり次第、示談交渉を開始します。

また、強制わいせつを行っていないという主張の依頼者の場合は、無罪を主張する理由・根拠を聞き取り、示談交渉を並行的に行うべき事案であるか否かを判断した上で弁護活動を展開します。

示談交渉

交渉基本的には、まずは弁護士から、被害者に、電話で連絡をします。電話を通じて、本人の反省や、刑事事件の今後の流れ、民事上の解決(示談)の重要性等を、被害者に伝えます。

数日後、再度被害者に電話をし、被害者のお考え、ご意見等を聞き、丁寧に説明をします。

その後も、相手のペースに合わせて示談交渉を継続し、被害者の希望する日時・場所で直接の交渉をも行います。その際には、示談書(案)を直接示し、示談をすることの効果を、わかりすく説明します。

示談の成立

示談交渉早ければ1週間、長ければ4ヶ月程度かけて、示談を成立させます(身柄事件の場合は、起訴されてしまう前の示談が重要ですので、勾留期間中(最大20日)に示談ができるように、土日祝日関係なく、最善を尽くします)。

示談成立次第、検察官に、示談成立の報告及び示談書の提出を行い、不起訴処分を求めます。

検察官は、宥恕文言(被害者が、被疑者の刑事処罰を求めない旨の意思表示)が含まれた示談がなされていれば、多くの場合、不起訴処分とします。

 

以上は一例です。強制わいせつ事件でお困りの方は、まずは当事務所にお気軽にご相談ください。

刑事専門弁護士が、解決までの流れを、わかりやすく説明いたします。

 

 


なぜ弁護士選びが重要なのか

強制わいせつ事件について

犯罪別『強制わいせつ』についてよくある相談

 

『強制わいせつ』の解決事例

 

強制わいせつに関する判例解説