監護者わいせつ・監護者性行等罪について

掲載日:2019年6月21日|最終更新日:2019年6月21日

監護者わいせつ・監護者性行等罪の制定経緯

法律監護者わいせつ・監護者性行等罪とは、平成29年の刑法改正によって、新しく制定された犯罪です。

条文は次のとおりとなっています。

これらの犯罪は親告罪ではないので、被害者の刑事告訴がなくとも起訴をする事が可能です。

 刑法179条
【刑法179条1項】
18歳未満の者に対し、そのものを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
【刑法179条2項】
18歳未満の者に対し、そのものをげんに監護する者であることによる影響力があることに乗じて性行等をした者は、第177条(強制性交等罪)の例による。

平成29年改正前の刑法は、不同意なわいせつ行為又は姦淫のうち、違法性が高く、かつ、悪質であると類型的に認められるものとして、暴行若しくは脅迫を用いてなされたもの又は心神喪失若しくは抗拒不能に乗じるなどしてなされたものを、それぞれ強制わいせつ罪、強制性行等罪(改正前は強姦罪)又は準強制性行等罪(改正前は準強姦罪)として処罰の対象としていました。

そのため、監護者わいせつ・監護者性行等罪が制定される前は、監護者及び被監護者の間で行われたわいせつ行為や姦淫行為が、被害者の意思に反して行われたものであったとしても、暴行又は脅迫の事実が認められない場合には、強制性行等罪ではなく、より軽い法定刑しか存在しない児童福祉法違反等で処分する他ないという状況でした。

このような取り扱いしかできないことで、加害者にとっても、また被害者にとっても、監護者による性犯罪が重大な犯罪であるという事が伝わりにくいという問題もありました。

しかしながら、18歳未満の者は、一般に精神的に未熟である上に、生活全般にわたって自分を監督している監護者に精神的・経済的に依存せざるを得ません。

そのような依存状態において、監護者が、監護者であることによる影響力を利用してわいせつ行為や性行等を行う場合には、強制わいせつ罪や強制性交等罪の場合と同じように、被害者の性的自由・自己決定権が侵害されているといえます。

そのため、監護者による性犯罪は、暴行脅迫を受けていない場合や抗拒不能状態でない場合であっても、強制わいせつ罪や強制性交等罪のように処罰をすべき悪質な事案であると考えられるようになりました。

このような状況を考慮して、監護者わいせつ・監護者性行等罪が制定されたのです。

 

 

監護者わいせつ・監護者性行等罪はどんなときに成立する?

監護者わいせつ・監護者性行等罪の構成要件

監護者わいせつ・監護者性行等罪はどのような場合に成立するかというと、①「現に監護する者」が、②「影響力に乗じて」、性的な行為に及んだ場合に成立します。

逮捕強制わいせつ罪や強制性交等罪は、13歳以上の者が同意していた場合には成立しない犯罪ですが、監護者わいせつ・監護者性行等罪は、18歳未満のものが同意していた場合であっても成立します。

なぜなら、表面上は18歳未満の者が同意しているように見えたとしても、その同意は監護者の影響力によるものである可能性が否定できない、すなわち、自由意志に基づいた同意とは考えられないことが理由として考えられます。

なお、監護者わいせつ・監護者強制性行等罪が成立しない場合であって、暴行脅迫を行なっていない場合や、被害者が抗拒不能と判断されない場合は、以前と同様に児童福祉法違反や各都道府県の条例違反となる可能性はあります。

 

「現に監護する者」とは?

まず、「監護」とは、民法820条において親権の効力として定められているものと同様に、18歳未満の者に対する監督・保護をいいます。

ただし、この「監護」は、民法820条の監護権に基づくものである必要はなく、事実上18歳未満の者を監督し、保護するという関係にあるのであれば、「現に監護する者」に該当する可能性があります。

もっとも、民法上の監護権において定められている「監護」は、親子の関係を基本とする概念です。

そのため、「現に監護する者」といえるためには、親子関係と同視し得る程度に、生活全般にわたって依存関係が認められ、かつ、その関係に継続性があることが求められます。

「現に監護する者」にあたるかどうかの具体的な判断要素としては、①同居の有無、②未成年者に対する指導状況、③身の回りの世話等の生活状況、④生活費の支出等の経済状況、⑤未成年者に対する諸手続等を行う状況といった要素が挙げられます。

そのため、必ずしも法律上の監護権を有する者でなくても「現に監護する者」と認定されることがある一方、法律上は監護権を有する者であったとしても、実際に監護していなければ、「現に監護する者」には当たらないということになります。

「現に監護する者」に該当し得る具体的な例としては、実親、養親等が挙げられます。

また、児童養護施設の職員であっても、個別の事案における具体的な事実関係によっては該当する場合があります。

他方、学校の先生やクラブのコーチなどは、18歳未満の者に対して指導を行う立場であり、18歳未満の者に対して強い影響力を持つことが一般的ですが、生活全般にわたって親子関係と同視できるような関係があるわけではありません。

そのため、上で述べたような判断要素によると、「現に監護する者」には当たらないということになります。

 

「影響力に乗じて」とは?

「影響力に乗じて」とは、監護者が何らかの行為を行うことを必要とする趣旨ではありません。

黙示的に影響力を行使する場合や、挙動一般によって影響力を利用する場合も、「影響力に乗じて」という要件に含まれていると考えられています。

しかし、反対に、影響力に乗じたといえない場合であれば、監護者であっても同罪には該当しません。

怒る男性例えば、監護者であるという事が分からないような態様で犯行に及んだ場合には、監護者の影響力を18歳未満の者が認識し得ないので、同罪には該当しないことになります。

ただし、そのような場合の多くは暴行脅迫を用いていたり、被害者の意に反する行為であったりすると思われますので、通常の強制わいせつ罪や強制性交等罪が成立することでしょう。

 

 

 

監護者わいせつ・監護者性行等罪の弁護方針

犯行を認める場合

逮捕監護者わいせつ・監護者強制性行等罪は、同居する18歳未満の者が被害者である事が想定されます。

そのような場合には、被害者に対する証拠隠滅の可能性が高いと判断され、犯行を認めていても逮捕される可能性が高くなると考えておくべきです。

しかし、逮捕されたとしても、その後示談が成立したり、再犯防止のための措置を取ることを誓約したりすることで、早期に釈放される可能性が高まりますし、起訴されたとしても執行猶予付き判決を得られる可能性が高まります。

また、犯行を認めていたとしても、警察官の取り調べにおいて、より罪責が重くなるような供述調書を作成されるおそれも否定できません。

そのため、供述調書を作成されるにあたっての注意点やアドバイスを聞く必要もあるでしょう。

一刻も早く身体拘束を解き、処分を適正なものにする活動を行うためには、早急に弁護士を選任し示談交渉を行うことや再犯防止に向けた方針を定めていくことが必要です。

監護者わいせつ・監護者性行等罪の性質を踏まえると、単純に示談金を支払って解決ということではなく、再び同じ事件が起こらないように考え、行動することが真の問題解決に繋がります。

 

犯行を認めない場合

監護者わいせつ・監護者性行等を認めない場合には、逮捕をされる可能性が更に高くなります。

それに加えて、最長20日間の勾留がされることも覚悟しておかなければなりません。

長期の身体拘束となってしまうことで、私生活への影響も出てくる可能性が高くなりますから、可能な限り早期に釈放されるよう、迅速な弁護活動を行う必要があります。

そのためには、被疑者が犯行を行なっていないことを示す証拠を検察官や裁判所に提出することが重要になってきます。

記録や証拠弁護士が独自に事実関係を調査し、少しでも有利な証拠を収集することになりますが、弁護側の熱意と技量によって、証拠収集は大きく影響を受けます。

刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要になるでしょう。

監護者わいせつ・監護者性行等罪を犯してしまった方、疑われている方、家族が監護者わいせつ・監護者性行等罪で逮捕されてしまった方はまずは刑事事件に注力する弁護士が在籍している当事務所に、お気軽にご相談ください。

 

 


なぜ弁護士選びが重要なのか