司法取引制度の開始について


本日(平成30年6月1日)から、司法取引が開始されます

これまで、刑事訴訟法において、被疑者・被告人と捜査機関(検察官等)との取引を認める規定はありませんでした。司法取引制度(政府は「合意制度」と呼んでいます)は、国として、被疑者―捜査機関の間での取引を公認する初めての試みです。

取引

被疑者は、司法取引が成立すれば、他人の犯罪に関して捜査協力をすることによって、不起訴処分を獲得したり、執行猶予つき判決を獲得したりすることができるようになります。

組織犯罪の解明に資すると評価される一方で、無実の者の引き込みの危険等、懸念点も残る新制度です。今後運用をしていく中で、制度を整えていく必要があります。

刑訴法第350条の2第1項は、以下のように規定しています。

刑訴法第350条の2第1項

「検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が特定犯罪に係る他人の刑事事件(以下単に「他人の刑事事件」という。)について一又は二以上の第1に掲げる行為をすることにより得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重及び情状、当該関係する犯罪の関連性の程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、被疑者又は被告人との間で、被疑者又は被告人が当該他人の刑事事件について一又は二以上の同号に掲げる行為をし、かつ、検察官が被疑者又は被告人の当該事件について一又は二以上の第2号に掲げる行為をすることを内容とする合意をすることができる。

1号 次に掲げる行為
イ 第198条第1項又は第223条第1項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して真実の供述をすること。
ロ 証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること。
ハ 検察官、検察事務官又は司法警察職員による証拠の収集に関し、証拠の提出その他の必要な協力をすること(イ及びロに掲げるものを除く。)。

2号 次に掲げる行為
イ 公訴を提起しないこと。
ロ 公訴を取り消すこと。
ハ 特定の素因及び罰条により公訴を提起し、又はこれを維持すること。
ニ 特定の素因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求すること。
ホ 第293条第2項の規定による意見の陳述において、被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること。
ヘ 即決裁判の申立てをすること。
ト 略式命令の請求をすること。」

取引は、被疑者・被告人に不利なものとならないよう、弁護人が同席のもとで行われます(刑事訴訟法第350条の3)。

被疑者・被告人としては、弁護人と入念に打ち合わせをし、検察官から提案された取引に応じるか否かを検討する必要があります。また、被疑者・被告人から、検察官に対し、積極的に取引を持ちかけることもできます。

弁護士バッジまずは、弁護人に相談をし、取引を持ちかけるべきか否かを慎重に検討すべきでしょう。

司法取引が許される事件は、限定されています(特定犯罪)。

特定犯罪とされているのは、強制執行妨害罪、犯人蔵匿・証拠隠滅罪、文書偽造罪、贈収賄罪、詐欺罪、横領罪、薬物犯罪等です。特定犯罪ではない事件でなされた司法取引(合意)は無効です。

薬物と手錠

司法取引の対象となる特定犯罪を犯した方は、早期に刑事専門弁護士を選任し、検察官と充実した協議を進めることで、不起訴処分などの有利な処分を受ける可能性を高めることができます。刑事事件に注力し、司法取引の知識のある弁護人を選任することが重要です。

当事務所には、刑事事件チームが設置されていますので、刑事事件でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

 

 

この記事を書いた人

牟田口裕史

弁護士コラム一覧

  • 弁護士 牟田口裕史 
    これまで、刑事訴訟法において、被疑者・被告人と捜査機関(検察官等)との取引を認める規定はありませんでした。司法取引制度(政府は「合意制度」と呼んでいます)は、国として、被疑者―捜査機関の間での取引を公...[記事全文]
  • 弁護士 牟田口裕史 
    平成30年3月に報道された内容によりますと、平成29年に児童ポルノ関連事件として摘発された数は、2413件であり、過去最高を記録しています。児童ポルノ関連事件数が飛躍的に増加している背景には、平成29...[記事全文]
  • 弁護士 牟田口裕史 
    妻が浮気をしているのではないかと疑い、妻が普段から使用している自家用車にGPSを取り付けました。妻にGPSが発見され、警察に通報されてしまいました。警察からGPSを取りに来るように呼び出されていますが...[記事全文]
  • 弁護士 入野田智也 
    平成29年6月16日、刑法の一部が改正され、「強姦罪」について大幅に変更がなされました(施行は7月13日)。今回の改正は、多くの改正を含んだものですが、その改正点についての概説的な解説に加え、LGBT...[記事全文]
  • 弁護士 牟田口裕史 
    警察が裁判所の令状を取らずに、被告人の車に無断でGPSを取り付けて被告人の位置情報を取得するという捜査の適法性が争われた裁判で、平成29年3月15日、最高裁判所大法廷は、そのようなGPS捜査は強制捜査...[記事全文]
  • 弁護士 入野田智也 
    刑事収容施設でのトランスジェンダーの方をめぐる問題は、LGBTという言葉が社会に広まった現在でも未だに残っています。その内容としては、①戸籍上の性別ではなく、性自認の性別で扱ってもらえるのか、②ホルモ...[記事全文]
  なぜ弁護士選びが重要なのか

  裁判では99%が有罪   WEB予約はこちら